みちびきCLAS L6 受信用IC NEO-D9C 開発ボードD9CX1の試作

みちびき(QZSS)のL6バンドで送信されているデータを受信するための基板を作成しました。
受信のためのICはu-bloxのNEO-D9Cで、CLASおよびMADOCAの補強データを受信できます。
この基板で受信したデータをu-bloxのZED-F9Pに供給する事により、無線リンク無しの単独で、センチメータ精度の測位が可能です。

上の画像で中央のICがNEO-D9Cで、その左側にあるのがスプリッタ用のICです。
上側のSMAコネクタにL1,L2,L6バンドが受信できるアンテナを接続し、下側のコネクタとZED-F9Pのアンテナ端子をケーブルで接続するようになっています。

下側のコネクタのすぐ上、JP4はジャンパーピンで、アンテナに電源を供給するかどうか選択できます。通常はZED-F9Pから電源を供給しますので使わないですが、この基板を単独で使用する場合には接続するようにします。

基板右側の上のコネクタはマイクロUSBコネクタ、下のコネクタはI2C用Groveコネクタです。

動作確認

NEO-D9CからはCLASの補強データがUBX形式で各ポートに出力されています。
このデータをZED-F9Pに供給すればZED-F9PではRTKによるセンチメータ測位が行われますが、供給の方法はどのポートを使うかにより違ってきます。

1.USB
  パソコンやラズパイなどUSBポートを持っている機器を介して接続します。
  仲介するソフトが必要で、RTKLIBのstrsvrなどが使用できます。
2.UART
  NEO-D9CのTX2をZED-F9PのRX2に接続するだけでOKです。
3.I2CまたはSPI
  I2CまたはSPIのコントローラとなるマイコン等を介して接続します。

このうち、USBとUARTについて動作確認を行いました。
  

USB経由での補強データ供給

次の画像で、下側の基板は今回試作したNEO-D9Cの基板で、上側の基板はZED-F9Pが搭載された基板です。
ZED-F9P基板のアンテナ端子は同軸ケーブルでNEO-D9Cのスプリッタ出力コネクタに接続し、アンテナはNEO-D9C基板のアンテナコネクタに接続します。
また、それぞれのUSBコネクタはパソコンに接続します。

パソコンではUSBコネクタはシリアルポートとして認識されます。
NEO-D9CのシリアルポートからのデータをZED-F9Pのシリアルポートに供給するようにします。
その方法として、今回はRTKLIBのツールのstrsvr.exeを使用しました。
供給を開始後、10秒程度でZED-F9Pの基板の赤のLEDが点滅(Float)し、1分程度で消灯し、Fixした事が確認できました。

なお、CLASのデータによる補正を行うには、ZED-F9PのファームウェアのバージョンがHPG1.30でないとできませんので、事前にファームウェアのバージョンアップを行いました。

このバージョンアップが可能なハードウェアのバージョンですが、CSG Shopで購入したZED-F9P-00Bの基板で試したところ、正常にFixできました。
旧製品でも最新の機能にバージョンアップできるのは大変ありがたいことだと思います。

UART経由での補強データ供給

NEO-D9Cで受信したデータは試作基板の下側のTX2の端子に出力されます。
このTX2とZED-F9PのRX2を接続し、GNDと電源を接続すれば使用できるようになります。
この基板の電源は1.8~5Vで使用できます。

試作基板はSparkfunやArdusimple、Csg Shopなど、既存のZED-F9P用ボードとも接続可能ですが、弊社のZED-F9P開発ボードF9PX1と組み合わせ易いようにしました。
基板の大きさは同じで、基板下側の7ピンのコネクタは直接接続できるようにしました。そのため、TX2とRX2の配置は逆になっています。
次の画像は2段に重ねたものです。

NEO-D9Cの設定としては、UART2のUBX出力と、ボーレートをZED-F9PのUART2のボーレート(既定値は38400bps)に合わせる事だけでOKでした。
電源オン後、1~数分でFixすることが確認できました。

どちらのポート経由でも同じですが、Fixするまでの秒数は衛星の配置により大きく変化し、非常に短い場合となかなかFixしない時がありました。

また、NEO-D9Cのマニュアルには、初期化時間を早めるために、ZED-F9Pから、UBX-NAV-PVT、UBX-NAV-TIMEGPS、UBX-RXM-SFRBXを送るようにと書いてありますが、送らなくても結構早くL6バンドが受信できていました。

2段重ねにするとコンパクトになっていいのですが、基板間の同軸ケーブルが邪魔に思えます。
基板間だと、コネクタはSMAでなくてもいいので、MCXにするとより扱いやすくなりそうです。

回路図

回路は弊社のZED-F9P開発ボードF9PX1と殆ど同じですが、u-bloxのIC本体が違うのとスプリッタを搭載している点が違います。
NEO-D9Cのマニュアルに記載されているピン配置図ではアンテナのオープンショートなどの名称が書かれていますが、実際には利用できないようです。
そのため、この基板ではアンテナのオープンショートの検知回路は削除しています。
検知する場合はZED-F9P側で行う必要があります。


販売予定

今回試作した基板は3月末頃に販売する予定です。
価格は17,000円(税抜き)前後を想定していますが変更があるかもしれません。
台数が限られていますので予約を頂いた方を優先しますので、必要な方は仮予約して下さい。
仮予約頂いた方には仕様や価格が決まり次第ご連絡致しますので、本予約を行って下さい。

仮予約は弊社のお問い合わせページにて、連絡先とお問い合わせ内容に「D9CX1の仮予約」と書いて下さい。
現在、すでに弊社のネットショップで販売しています。
販売ページ:みちびき CLAS L6受信用 NEO-D9C開発ボード D9CX1

走行テスト

今回の試作基板ではありませんが、NEO-D9CとZED-F9Pを組み合わせた場合の走行テストを行っていますので参考にして下さい。
みちびきL6受信用IC NEO-D9C / CLAS 走行テスト 時速50km以下
みちびきL6受信用IC NEO-D9C / CLAS 走行テスト 高速道路、一般道、市街地