u-bloxの2周波RTKモジュールZED-F9Pを使う場合、2周波もしくは多周波に対応したアンテナが必要です。弊社の販売サイトでも何種類かアンテナを販売していますが、カタログスペックだけでは性能の違いが良く分かりません。
一つの判断基準はRTKの初期化時間で、ZED-F9PのRTK初期化時間 TTFFにその測定結果を掲載しています。
もう一つの判断基準として受信強度があります。受信強度はZED-F9Pが各衛星からの電波を受信した時の信号の強さを表す指標で、衛星毎の値がZED-F9Pから出力されています。
この受信強度は衛星の送信電力、衛星の位置、大気の状態、受信アンテナのゲインにより変化します。そのため単純な比較はできず、平均化処理が必要で、処理の詳細はアンテナ別 ZED-F9P受信強度の測定方法を参照して下さい。
次の表は、弊社にて各アンテナ毎に24時間測定した結果で、ZED-F9Pの受信強度(搬送波/雑音電力密度 単位:dBHz)をアンテナ別、衛星-周波数別に表したものです。
アンテナは弊社で販売している8種類と、参考のため測量用として定評のあるGPS703GGGの計9種類について測定しました。
衛星はGPS,GLONAS,GALILEO,BEIDOUの4種類でそれぞれL1,L2の2周波数についての測定値です。
それら8項目を平均した値を平均値の列に表示しています。
外径または長さには、円形のものは外径、長方形の場合は最大辺の長さ、棒状のものは長さを表示しています。
アンテナ別ZED-F9Pの受信強度 C/N0 (dbHz) | |||||||||||
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衛星→ | GPS | GLONASS | Galileo | BeiDou | 平均値 | 外径または長さ | 測定日 UTC | ||||
アンテナ↓ | L1 | L2 | G1 | G2 | E1 | E5b | B1 | B2 | |||
GPS703GGG | 47.9 | 43.0 | 48.8 | 38.7 | 46.3 | 44.1 | 47.4 | 42.5 | 44.8 | 185mm | 2019/5/3 21:46 |
JCA228 | 48.9 | 45.5 | 50.5 | 42.6 | 47.8 | 47.2 | 48.4 | 45.1 | 47.0 | 147mm | 2019/5/31 5:38 |
GGB0710 | 48.6 | 44.5 | 50.4 | 40.7 | 47.9 | 46.9 | 47.9 | 44.7 | 46.4 | 147mm | 2019/5/2 10:11 |
JCA228E | 48.2 | 44.0 | 49.1 | 42.2 | 47.1 | 46.5 | 47.8 | 44.5 | 46.2 | 152mm | 2019/6/18 4:36 |
GOYH7151 | 49.0 | 44.8 | 50.0 | 37.7 | 47.8 | 46.9 | 47.4 | 45.3 | 46.1 | 150mm | 2019/5/15 4:40 |
JCA225S | 48.1 | 41.4 | 47.3 | 36.4 | 47.3 | 44.6 | 47.7 | 43.0 | 44.5 | 67mm | 2019/5/4 22:01 |
ANN-MB-00 | 45.6 | 41.4 | 47.8 | 40.8 | 43.4 | 43.8 | 43.4 | 41.6 | 43.5 | 60mm | 2019/5/17 8:09 |
TOP107 | 45.5 | 41.3 | 46.5 | 37.2 | 43.9 | 42.2 | 44.9 | 41.4 | 42.9 | 58mm | 2019/5/1 9:58 |
AN306 | 45.2 | 42.3 | 45.4 | 35.0 | 44 | 43.2 | 43.4 | 41.3 | 42.5 | 56mm | 2019/5/19 1:28 |
表の値を図示したのが次のグラフです。
この測定結果から次の事が言えそうです。
1.受信強度とアンテナの大きさの関係
平均値と外径または長さの列を見比べると、アンテナが大きいほど受信強度が強い傾向があります。
これは理論的にも予測される事ですので、アンテナを選ぶ際、条件が許せば大きいアンテナを選択するのが良いと言えます。
2.受信強度と周波数の関係
いずれの衛星でもL2バンドの受信強度はL1バンドより弱くなっていて、
GPSとBeiDouでは4dBHz程度、GLONASSは8dBHz程度、Galileoは少なく2dBHz程度弱くなっています。
主な原因は衛星から出力されるL2バンドの電波が弱いためで、受信強度が弱くなっているのは自然なことですが、これらの数値から大きく外れる場合は原因を調べる必要があります。
3.受信強度とRTK初期化時間TTFFの関係
各アンテナについてZED-F9PのRTK初期化時間 TTFFと比較すると、受信強度が強ければ初期化時間が短いとは言えない事が分かります。ヘリカルアンテナであるAN306やTOP107は受信強度はそれほど強くありませんが、初期化時間は短いので、オープンスカイでの受信強度としては十分だと言えます。
お断り
受信強度は同じアンテナでも測定する日によって1dBHz程度は違います。
そのため、上記の結果において1dBHz程度の差は差がないものとお考え下さい。
また、GPS以外の衛星では測定する日によって衛星番号の違う衛星での平均値となっています。そのため、測定値に不公平な点があるかもしれません。本来は同じ衛星番号の衛星で平均を取るべきですが、それには一つのアンテナで何日も測定する必要があり時間がかかるので行っていません。
上記の結果は弊社で販売するアンテナの性能を保証するものではなく、動作確認のため掲載しているものです。