ZED-F9PのMovingBase設定方法

ZED-F9PとNEO-D9Cを使ってCLAS測位を行っている場合にMovingBaseが正常に動作するか試してみました。
結果は特に問題なく動作しました。
以下、MovingBaseの設定方法として使えるようにまとめました。

接続


次の画像は接続の様子で、左側はZED-F9PとNEO-D9Cを重ねた基板、右側はZED-F9P単独の基板です。
左側の基板に関しては「みちびきCLAS L6 受信用IC NEO-D9C 開発ボードD9CX1の試作」及び「CLAS方式GNSS受信機セット【TakionCM001】」を御覧下さい。
それぞれの基板の詳細は弊社のネットショップを御覧下さい。

信号線の接続は、グランド(GND 黒)、電源(V5V 赤)と左側基板のTXと右側基板のRX(白)を接続します。
この接続では、左側基板は基準局、右側基板は移動局として動作します。

設定

設定は
1.ファームウェアのバージョン確認および更新
2.測位レート設定
3.ボーレート設定
4.基準局データの出力設定
が必要です。
基板のUSBコネクタとパソコンを接続し、u-centerで各設定を行って下さい。

ファームウェアのバージョン確認および更新

ZED-F9PのMovingBase機能は、ファームウェアがHPG1.13以上の方がパフォーマンスが良いので、必要に応じてバージョンアップを行います。
ファームウェアのバージョン確認、更新方法は「ZED-F9Pファームウェアのバージョンアップ」を御覧下さい。
以下の説明はファームウェアがHPG1.13以上を前提にしています。

測位レート設定

1秒間に何回の測位を行なうかで、設定項目が変わります。
1Hz(1回/秒)の場合は、測位レートおよびボーレートの設定はデフォルトのままでOKです。
2Hz以上の場合は、基準局基板、移動局基板の両方を同じ測位レートに設定します。
上限の測位レートは8Hzです。

ボーレート設定

ZED-F9Pの工場出荷時のボーレートは38,400bpsで、測位レートが1Hzの場合はそのままで問題ありません。
測位レートが2Hz以上の場合、ボーレートは両基板とも460,800bpsに設定します。

基準局データの出力設定

基準局基板の次の項目を設定します。

VALSETグループ名VALSET項目名 ・KEY Name(ID)
CFG-MSGOUTCFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE4072_0_UART1
1
CFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE1074_UART1
1
CFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE1084_UART1
1
CFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE1094_UART1
1
CFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE1124_UART1
1
CFG-MSGOUT-RTCM_3X_TYPE1230_UART11
CFG-UART1OUTPROTCFG-UART1OUTPROT-UBX0
CFG-UART1OUTPROT-NMEA0

設定の確認

信号線の接続および設定が正常に行われたかを次のように確認します。

移動局基板とパソコンを接続し、u-centerを起動します。
u-centerのメニュ View > Message View とクリックし、左側のウィンドウのUBXをクリックします。
UBXのツリーが展開されますので、CFG > MSGとクリックします。
右側ウィンドウにMessageと書かれたプルダウンリストが表示されますので、「02-32 RXM-RTCM」を選択し、USBの欄にチェックを入れ、Sendボタンを押します。

次に、UBX > RXM > RTCMとクリックすると次の画面が表示されます。
この画面の中央のStatisticsのウィンドウに6項目のメッセージが表示され、カウント数値が1秒毎に増加していれば設定は正常です。

何もメッセージが表示されない場合は信号線の接続と基準局の設定をご確認ください。
CRC failed messagesが多い場合は、信号線の接触不良をチェックし、問題無い場合はボーレートを下げて下さい。

正常に動作してMovingBaseによる測位がされるようになると、上の画面の右側ウィンドウのFix Modeの欄にFIXEDと表示されます。

測位結果の利用

MovingBaseによる測位結果のうち、位置はNMEAセンテンスで出力されますが、アンテナ間距離と方位はNMEAセンテンスでは出力されません。
NMEAの規格では、方位を表すセンテンスとして$GPHDTというセンテンスがあるのですが、ZED-F9Pの現在のバージョン(HPG1.32)ではサポートされていません。
それで、移動局基板で測位したアンテナ間距離と方位はバイナリ形式(UBX)で取得する必要があります。

アンテナ間距離と方位を表すUBXメッセージは「UBX-NAV-RELPOSNED」です。
移動局基板のどのポートからデータを出力するかにより、そのポートからこのメッセージが出力されるように設定します。

次の画面はこの「UBX-NAV-RELPOSNED」を表示したもので、基準局のアンテナから見た移動局のアンテナのNED座標とアンテナ間距離と方位が取得できます。

その他

最高測位レート

仕様では、MovingBaseでの測位レートは最高8Hzですが、CLAS測位を行ないながら測位レートを上げていき、8Hzまで正常に動作する事が確認できました。

資料

「ZED-F9P-MovingBase_AppNote_UBX-19009093」
u-blox発行のMovingBaseに関するアプリケーションノートで、上記に記載した事柄以外に、アンテナの選択や配置などの注意する事が書かれています。