1.受信強度
受信強度はZED-F9Pが各衛星からの電波を受信した時の信号の強さを表す指標で、衛星毎の値がZED-F9Pから出力されています。
u-bloxのモニタソフトu-centerでは受信強度は次のようにNMEAのGSVセンテンス及び棒グラフで見る事ができます。
棒グラフの高さは時々刻々変化し一定ではありません。
次のグラフは受信強度を24時間測定して、受信できた各衛星の強度変化を衛星毎に色を変えてプロットしたものです。
横軸は測定開始からの秒数、縦軸は受信強度です。
次のグラフは上のグラフからいくつかを抜き出したものです。
このグラフで分かるように受信強度は一定ではありませんが、衛星によってはほぼ一定になる時間があります。
次のグラフは横軸を衛星の仰角にしたもので、折れ線グラフは受信強度の平均値、棒グラムはその仰角の測定頻度を表しています。
折れ線グラフの赤と青のヒゲは最大値と最小値を示していて、ヒゲが長いほど受信強度のばらつきが大きい事になります。
衛星 | 仰角別受信強度と頻度 |
---|---|
GPSP24 | |
GLONASSL78 | |
GalileoA26 | |
BeiDouB06 |
これらのグラフから、仰角が大きいほど受信強度は強くなり、またばらつきも少なくなると言えます。
特に仰角が80度以上、即ち天頂付近に衛星がある場合は受信強度はほぼ一定になります。
これらの傾向は上に示した衛星だけでなく他の衛星でも同じです。
受信強度は、上記のように衛星の仰角によって大きく変化しますが、次の要因によっても変化します。
1)個々の衛星の違い
GNSS衛星の寿命は5~15年程度で、寿命が来た衛星に代わり新しい衛星が打ち上げられます。
その際、打ち上げられるのは最新モデルの衛星で、以前のモデルとは電波出力や送信アンテナの性能が違ってきます。
その結果、複数のモデルの衛星が存在する事となり、個々の衛星で受信強度が変わってきます。
その変化の幅は弊社での測定では10dBHz程度です。
2)周波数
GNSS衛星から発射される電波の周波数は大きく分けて1.5GHz帯(L1バンド)と1.2GHz帯(L2バンド)の2つの帯域で送信されています。
その電波出力は一般のカーナビで良く使われる1.5GHz帯の方が大きくなっていて、受信強度も違ってきます。
弊社の測定では2~8dBHz程度の違いがあります。
3)GNSS受信機
受信強度または信号強度として受信機から出力される値の定義、意味は受信機によって違う事があります。また同じ意味でも求め方は各社独自の方法が取られていて、さらに同じメーカの製品でも性能の違いが受信強度に関係します。そのため受信強度は受信機によって違ってきます。
4)アンテナ
衛星の位置(高度)と共に最も受信強度を左右するものがアンテナです。例えば一般のカーナビ用のアンテナでは1.2GHz帯(L2バンド)の受信強度は0dBHzとなり、使用する周波数に対応したアンテナを使う必要があります。
その上で受信強度に関係する要素はアンテナの大きさで、一般に大きいほど受信強度が強くなります。
弊社で販売しているアンテナでは受信強度が5dBHz程度の違いがあります。
5)大気の状態
衛星放送では雨が強いと画面が乱れる事があり、電波は雨など大気により減衰します。GNSSの電波も減衰しますが、波長が長いため大気の影響は無視でき、受信強度は変わらないと考える事ができます。
6)受信機及びアンテナ周辺の雑音
受信強度は信号電力と雑音電力の比率であり、受信機やアンテナの周辺から発生する雑音が多いと受信強度は弱くなります。
通常の受信強度が得られない場合は周辺の雑音が多くないか調べる必要があります。
2.アンテナ別受信強度の測定方法
上記のように受信強度は色々な要因で変化しますが、条件を絞って受信強度を測定する事により、アンテナの動作確認や評価に使えます。
弊社では次のようにしてアンテナ別の受信強度を測定しています。
1)GNSS受信機
受信強度を測定する受信機はu-bloxのZED-F9Pを使用しています。
バージョン:ZED-F9P ES FW:1.0 HPG1.0
2)受信強度の取得
受信強度はZED-F9Pから出力されるNMEAのGSVセンテンスから得ています。
観測時間は一つのアンテナにつき24時間で、その間のNMEAセンテンスを全て保存します。そして、その後の処理で仰角80度以上のデータだけ抜き出して、平均をとってそのアンテナの受信強度としています。
3)平均処理
平均処理では基本的には仰角80度以上の衛星全てについての平均を取っていますが、一部排除する衛星があります。
24時間の観測で、仰角80度以上に入る衛星は毎日同じ場合と違う場合があります。GPSは毎日10機(2019年6月現在)の同じ衛星ですが、GLONASS、Galileo、BeiDouは顔ぶれが変わります。その違う顔ぶれの中に電波出力の弱い衛星が含まれているとその日の平均値は下がります。そのため、電波出力の弱い衛星は省いて平均を取っています。
排除している衛星は次のとおりです。
衛星の種類 | 仰角80度以上になる衛星数 | 排除する衛星番号(u-blox GSV番号) |
---|---|---|
GPS | 10機 | 無し |
GLONASS | 2~5機 | 65,70,77,80,83,84,88 |
Galileo | 2~5機 | 11,12,19,20 |
BeiDou | 6~8機 | 無し |
お断り
平均値を求める際に受信強度はデシベル表記ですので、デシベル値を単純に平均するのでなく、デシベル値を真値に戻した値を平均する必要があります。現在はこの本来の求め方でなく、単純な平均値を表示しています。